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ミーン ミーン ミン ミン ミン。
今から二十年前。時はバブル絶頂の八十年代後半。ボクは小学四年生。
ここは東京の外れの町田市の更に外れ、神奈川県川崎市との県境に位置するボクの実家。
この頃のボクは光GENJIのカークンに憧れていたので、髪型はサイドバック。更に個性的なボクは、そこにチェッカーズのフミヤの要素も取り入れて、一束だけチョロンと前髪が長く、更にこの詰めの甘い感じが小学生なんだが、目が悪かったので、その髪型にプラスして銀縁眼鏡と、完全に他にはいない小学生だった。
トチ狂っていたボクは、そんな自分が最高にイケてると思っていたので、兄貴と相部屋の自分の部屋では、いつも鏡を見ているキモチ悪い小学生だった。この頃、中学生だった兄貴の影響もあって、同級生より早くオナニーの存在を知ったボクは、やった事もないオナニーの自慢話しで、同級生よりも一歩も二歩も先を行く存在だった。
今日から夏休み、そんなボクの奇行を心配した両親の命令で、強制的に塾の夏期講習に参加する事になっていた。その塾にはボクの通う町田市立渚小学校と、県をまたいだ隣の川崎市立柿沼小学校の生徒が主に通っていた。トモダチのポケンコや宮迫も一緒に通う事になっていたし、そもそも東京のイケてる小学生であるという自信に満ち溢れていたボクは、神奈川県の小学校など当然のように格下だと思い込んでいた。
この髪型と得意のオナニーの話しで、初日からかましてやるつもりで、意気揚々と夏期講習に参加した。

柿生小学校の学区内にあるその塾は、半数以上が柿生小学校の生徒だった。しかし、ボクのこの髪型はインパクトがあるようで、初日から一目置かれている雰囲気を、授業などそっちのけで敏感に察知していたボクは、迎えた一時間目の休み時間、早速先制パンチを喰らわせてやろうと思って、地元の農家の息子丸出しのジャージルックが集まる、柿生小学校のグループに近づいていった。
「お前ら、オナニーって知ってるか?チョー気持ちいいんだぜ!」と言おうとしたその瞬間、彼らの会話が聞こえてきた。
「俺、昨日も夢精しちゃった。チョー気持ちよかったぜ!」
「おで(俺)も、一昨日出たよ」
オナニーすらした事のない俺には衝撃的な会話だった。兄貴がベットの下に隠していた男区(DANK)がバイブルだったボクは、オナニー同様に夢精の存在を知っていた。しかしそのバイブルによると、夢精とはオナニーよりも難易度が高く、選ばれた者にしか訪れない「大人の証」であると書かれていた。一瞬、あっ気にとられていたボクに更に追い討ちの一言が言い放たれた。
「お前、変な髪形だな!」
「昨日夢精をした」と言っていた、ノッポでオカッパ頭の奴が、ボクに言った。それがスズキとの出会いだった。
「馬鹿!コレは美容院で切ってるんだよ。チェッカーズとか、光GENJIも美容院で髪切ってるから、こんな感じになってるんだぜ!それに知ってっか?美容院は髪を洗う時に、キレイなお姉さんが頭を抱え込んで洗ってくれるから、オッパイが顔にあたるんだぜ!ぺロちゃんキャンディーはもらえないけどな。」
ボクは動揺を悟られないように言った。
「お前、すげぇな、おで(俺)、家で切ってるからよくわかんねぇ」
スズキの連れのヌボォーとした奴が言った。
その後もバイブルに書かれていた、「気持ちいいオナニーの仕方」を語りつくして、なんとか面子を保ったまま夏期講習を終えたボクは、翌年から学区内にある別の塾の夏期講習と、何故かピアノ教室にも通っていた。

