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ボクとスズキと、時々、ワダ ~半分事実で半分ウソ~

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八年ぶりの再会

その後も後輩に無理強いをし、ノルマは果たし続けたので、ワダと二人で何度かのステージを経験した。
高校を卒業し、付属の大学への進学も決まっていた春休みのある日の夜中、ボクは地元で一番の品揃えを誇るレンタルビデオ屋のセクシービデオコーナーで、今晩のオカズを漁っていた。 まだ当時はマイナーだった「素人モノ」が大好物だったボクは、いつも借りているインディーメーカーの素人モノのビデオの、最新作に目をつけた。
そして手を差し伸べようとしたその瞬間、後ろから大きな手が伸びてきて、ボクが借りようとしていたそのビデオをかすり取っていった。
それがスズキとの八年ぶりの再会だった。

「アレ!お前ツボイじゃねえ?」

ブルーのコンタクトに長めのドレッドヘアー、そして全身白の蛍光ナイロンといった、見た事のない色彩感覚をしたノッポが言った。

「俺だよ。小学校の時、塾が一緒だったスズキだよ」

確かに目元や口元に面影があるものの、その豹変振りに一瞬たじろいだ。

「ツボイだろ?サイドバックに銀縁眼鏡じゃねえから、わかんなかったよ。」

わからなかったのはコチラの方である。

「おー!スズキかぁ。お前も変わったな。わかんなかったよ。」

「何?ツボイも素人モノが好きなの?」・・・

ラッパー・スズキ誕生

久々の再会だった。ビデオはスズキが最初に手にしたという理由でスズキが借りる事になったものの、スズキが別のシリーズモノをお勧めするので、 ボクはそれを借りる事にした。そしてよほど暇だったのであろう、スズキの誘いで二人は夜中のデニーズに移動した。

「ツボイは最近何やってんの?」

「おー。俺はラッパーやってんよ。最近始めたばっかだけどな。」

「マジで!ラップってモテる?俺はレイブとか行って、遊んでんだけど、ヒップホップも興味があってさぁ」

「ハッキリ言ってモテるね」

嘘である。大してラップもできないボクがモテるはずもなかったが、「モテる?」と聞かれて「モテない」と答えるボクではなかったので、そう答えた。

「マジで!じゃあ俺もやろうかな。何人組みなの?俺も入れてよ」

ラッパー・スズキの誕生である。
スズキが加入し三人組みとなったボクとワダとスズキは、後から入ったスズキの強引な段取りで、スズキの家に集まるようになる。意外とお坊ちゃまであるスズキは、 アッという間に必要最低限の機材を揃え、ラップもするが、サンプリングでリズムトラックも作るようになる。今思うとアルファの原型はこの時に出来上がったのである。

⇒第九話に続く